イクイノックスは3歳春の時点ではクラシックを勝つことができませんでしたが、3歳秋からG1を3連勝しました。
3連勝目のシーマクラシックでの内容は新馬戦にも見える、ほぼ馬なりの完勝で、これが国際G1かと思えるほどでした。今後も無事走って、サイアーラインを繋げてほしいところです。
イクイノックスの父はキタサンブラックで初年度の産駒でした。
今年もソールオリエンスが京成杯を弱的相手とは言え、完勝し、クラシック戦線を賑わせています。牡馬戦線は混戦なだけに、チャンスはありそうです。
そこでイクイノックスのG1 3連勝を祝福するに際し、今後益々注目を集めるキタサンブラック産駒を見守るうえで、今一度キタサンブラックについて解析をしておきたいと思います。
血統
キタサンブラックの父ブラックタイドはご存じの通り、ディープインパクトの全兄でスプリングSだけ勝って、その後は、短中距離(マイル~2000m)で着はあったものの、未勝利で終わりました。
偉大な弟の活躍が無ければ、種牡馬になることはなかったでしょう。弟のような決め手はなく、どちらかと言うと時計の掛かるパワー寄りの馬場を得意としていました。
産駒にもその傾向が強く、マイネルフロストはほぼ父と同じような戦績でした。現在活躍中の馬でもフェーングロッテンです。
2~3歳春までに短中距離の重賞を勝って、古馬になって未勝利か、オープン競走勝ち程度の戦績でした。
キタサンブラックもスプリングSを勝ち、皐月賞でドゥラメンテに完全な力負けの3着、ダービーは17番枠から強引に番手につけて14着の惨敗は、血統的にも「距離の壁」と見られましたし、その後も父と同じような戦歴を辿るのではと見ていました。
母父は日本で古くから続いているプリンスリーギフト(Princely Gift)系テスコボーイの末裔サクラバクシンオーで、産駒は主にローカルのスプリントで活躍する産駒が多いものの、稀代の癖馬グランプリボスやスプリント能力を継ぐビッグアーサーなど、スプリント~マイルの活躍馬が多いので、キタサンブラックも距離の壁があり、1800~2000mで今後の活躍の場があり、仮にG1であれば、最も合ったG1は大阪杯と見ていました。
この考え方は血統派としては当然だったと思います。
ブラックタイド自身も、産駒も、基本的に小回りコースで時計の掛かる馬場での1800~2000mを得意としていました。そこに母父サクラバクシンオー、祖母の父もダート9F前後を得意にしていて、さしたる活躍馬も輩出していないジャッジアンジェルーチですからなおさらです。
適距離がマイル寄りにシフトしても、中長距離側にシフトすることは考えられない血統構成なのです。
3歳秋以降の戦績
夏を過ごして、秋初戦はセントライト記念を勝利します。
その後はご存じの通り、菊花賞を含め2000~3200mのG1で7勝を挙げ、名馬の仲間入りを果たしています。
最終戦績は20戦して12.2.4.2でした。
海外遠征はなかったものの、国内の中長距離G1は天皇賞春秋3勝を含めG1を7勝し、G1昇格後の大阪杯の初代チャンピオンにもなっています。
着外の2戦はダービーの14着、5歳時の宝塚記念9着で馬券対象から外れた2戦は惨敗でした。
デビューは3歳1月31日と遅かったのですが、その後平場の500万下→スプリングS→皐月賞→ダービーとデビュー4か月の間の5戦が堪えたこと、17番枠から2番手につけたことがダービー惨敗の原因でしょう。
宝塚記念も大阪杯、春の天皇賞と中3週で連勝後だったことが堪えたと見ます。
やはり、秋のG1 3連勝も厳しいですが、春のG1 3連勝も間に2マイルの天皇賞春が真ん中に入るので、秋よりも難しいと言えます。
ただ、それ以外は厳しい流れでも2、3着でした。さすがの内容だったと言えるでしょう。
何故血統を越えたのか
510㎏でデビューして皐月賞では同じく510㎏でした。
そして、ダービーで+10kgだったのに、夏を越して勝ったセントライト記念では、更に+12kgでした。
そこから快進撃が始まりました。
そこに何があったか個人的な考えを言うと、ポンプアップだったと見ます。
長目から追う、厳しい調教にへこたれず、筋肉と心肺機能の向上に成功したと見ます。
体重を増やせば強くなるというものではありませんが、古くは2歳時のナイーブな馬体の貴公子から最終形が野武士のような馬体になったテンポイント、近年なら牝馬ではありますが458㎏でデビューしラストランのマイルCSでは506㎏だったグランアレグリアがいます。
長距離には大きな馬格に、大量の筋肉をまとった馬体は基本的に合わないのですが、心配能力の高さが補っているのでしょう。これはある意味、後天的な能力が備わったと言えるでしょう。
この心配能力の高さが、遺伝すれば、愚兄の血がさらに伸びることになりそうです。
やはり、両馬の母ウインドインハーヘアが偉大だったというべきでしょうか。
まとめ
改めてキタサンブラックの血統表を眺めると、賢弟を持つサンデー系で、そこそこの、決め手と底力を持つノーザンダンサー系リファールのクロスを持ちながら、Princely Giftのスピードと日本で成功したノーザンダンサー系ノーザンテーストが入っています。
欠点だった芝でのスピードが母父によって補われた形です。
後は、心肺機能の成長力が遺伝すれば強い馬が産まれてくるのは必然です。
一流の種牡馬の条件は繁殖牝馬の良さも引き出し、様々なタイプの馬が輩出されることです。
今のところ
イクイノックスは母父のトレンドでもある距離万能血統キングヘイロー×成長力のあるトニービンで最高の組み合わせです。成長力もあり、馬体重の割には細く見え、馬体的にもまだまだ成長の余地がありそうです。恐ろしい。
ガイアフォースは母父クロフネでセントライト記念で距離的な心配がありましたが、祖母の父ダンスインザダークがカバーしました。しかし、菊花賞では距離のせいか惨敗でした。地力勝負型なのですが、今後も注目です。
まだ、オープン競走を勝っただけですがジャスティンスカイは母父Numerousはミスプロの直仔、祖母の父もRed God系と完全にスピードに寄っていますので、マイラーです。マイルに距離を縮めてから3連勝しています。
そして、2連勝で京成杯を勝ったソールオリエンスは母父がMotivatorで祖母の父がRainbow Quest系とこちらはスタミナに寄っています。Motivatorは重~いモンジューの仔ですが、ミスプロ系Gone Westが入っていますので、タイトルホルダーのように一本調子の懸念がありましたが、2戦を見る限り、全く問題ありません。注目です。
以上、牝系の良さを活かしながら、強い馬が出てきています。
そして、イクイノックスの出現で今後益々良い繁殖牝馬につけることになりそうです。
今年リーディングサイアーになりそうなロードカナロアを抜いて、リーディングサイヤーになる日が来るのではないでしょうか。
コメント