鉄の女
「鉄の女」とはネーミングが昭和ですね。
ゴルフ界で現在「鉄の女」と言われているのは先週勝った小祝さくらさんです。
毎週のようにある女子ゴルフのトーナメントですが、小祝選手はとにかく休みません。
アメリカのメジャーに出た前後の週も日本のトーナメントに出続けています。
彼女いわく「出られるのにもったいない」と言うわけです。
最初にゴルフ界で「鉄の女」と言われたのは、その昭和の時代の今堀りつ選手です。
1982年から1995年にかけて482戦連続出場の記録があります。彼女のピークは1985年でランキング6位になっています。
私がゴルフを本格的に始めたのは協力隊から帰ってきた1989年以降です。たぶん彼女のピークを過ぎていた頃でしょうか、ほとんどテレビに映るような順位でプレーしなくなっていた頃でしょうか、ショートホールで彼女が写りました。
150ヤードの距離でしたがリポーターは「3アイアンです」と言うと私も声に出てしまい「3アイアン?」と復唱してしまいました。放送席からも「3アイアン?」と驚きの声が上がりました。
アイアンはショートアイアン、ミドルアイアン、ロングアイアンとわかれ、後者に行くほど本来なら距離がでますが、3アイアンはロングアイアンで、通常150ヤード打つにはミドルアイアン(番手5~7)で、私のレベルで6、7番、男子トッププロなら9番で届く距離です。
その距離をベテランの女子には3番アイアンが必要でした。しかし、ヘッドスピードが出ない場合、低いライナーしか出ず、ボールが上がりません。それでも転がしてグリーンに乗せるべく頑張っている姿は、トーナメントに出るプロ選手としては、もう通用しないものでした。
一方で、時代はゴルフ道具の大きな転換期でした。
道具の進化
ボールは糸巻きボールからツーピース、ウッドはパーシモン(柿の木)からステンレス製の、いわゆるメタルウッド(メタルなのにウッド⁈)に替わる時期でした。
クラブのシャフト部分もスチール製からカーボン製が出てきて非力な人には選択肢が産まれてきました。
それまでは、選手には選択肢はなく、現代ではパワーがある男子プロが使うような代物を使っていました。
特にアイアンは裏面の重量の周辺分配による、キャビティータイプが出てきて、多少上がりやすく、スポットも広くなり打ちやすくはなりましたが、ロングアイアンの難しさは余り解消されません。
まず大きく進化したのは、遠くに飛ばす爽快さと、特に初心者にはスコアーが左右される面があるドライバーで、木(パーシモン-柿)から金属(ステンレス)に移り変わっていきます。反発係数が上がり飛ぶようになります。
ヘッドのサイズは当初あまり変わりませんでしたが、加工技術が進み大型化が可能になっていきましたが、ただ、ステンレスの比重の重さから、量をあまり使えず、薄くすると耐久性に難がでましたが、250ccくらいまでは行ったと記憶しています。それ以上の大きさにするには比重の問題が残りました。
そこで、でてきたのがチタンです。比重が軽く、硬度が高い特徴がありました。しかし、加工技術がまだ育っていない状態で薄く延ばすことができなかったのですが、キャロウェイ社がビッグバーサシリーズで大型化の先駆者となり、どんどん大型化したより大きいドライバーを投入してきました。
どこまで大きくなるかと思っていたら、ルール化されて460ccを上限と設定されました。
大きくなると、まず当たるという安心感が得られ、スイートスポットが広くなるメリットがあります。後は各ゴルファーのレベルや持ち球によって付加価値がつけられていく状況になり、それは今でも続いています。
ドライバーの話が長くなりました。
女子プロに大きな変化があったのはいわゆるショートウッドの出現で、それまで1(ドライバー)~5番(クリーク)までとされてきましたが、これもキャロウェイ社が、7番ウッドを皮切りに、9番、11番と出てきたことで、ロングアイアンの距離を弾道の高さも出ることで、非力な女子プロが飛びつき、ロングアイアンをバッグから抜いて行きました。
その後、進化を遂げたのが現在の用語で「ユーティリティ」。当時は「ハイブリッド」とかテイラーメイド社の商標である「レスキュー」でした。
いわゆるショートウッドとロングアイアンの融合系のクラブが出てきました。ウッドほど長くなく、アイアンよりも長く形状もウッドのような半円形とアイアンの中間の形状でショートウッドと遜色ない飛距離と、ヘッドスピードにもよりますがロングアイアンでは得られないスピン性能が非力でも得られるメリットがあります。
これは、現在の主流でユーティリティを入れていない女子選手はほぼ皆無です。
クラブの進化は成熟期を迎えたと言っていいと思います。今後これまで起きたほどの進化は起きないでしょう。
日本女子プロのセッティングと鉄の女
現在の女王山下選手はウッド1、3、5に4、5のユーティリティ、アイアンは6番からになっています。
冒頭の今堀選手がこの時代にプレーしていたら、簡単にユーティリティかロフトが立って進化したミドルアイアンで十分届いていたでしょう。その頃には40歳ほどだったと思いますが、もう少し選手寿命(出場できるシード権の確保)も伸びていたのかもしれません。
連続試合出場はあまり意味がないと思いますが、長くツアーで活躍することに意味はあると思っています。
今年のシードで選手では昨年11年ぶりの優勝で話題になった藤田さいき選手が85年、上田桃子選手が86年生まれで頑張っています。
藤田選手はとっくに引退している宮里藍さんと同年生まれです。頑張ってますよね。
クラブの進化とトレーニング技術の進化を得て、両選手とこちらも11年ぶりに優勝を果たした、名古屋の天才少女でベテラン域に入った金田久美子選手は89年生まれですが、いつまでも見ていたい選手です。
3人とも十分に鉄の女と言えるのではないでしょうか。
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