G1シーズンでもありますし、競馬に興味を持ち始める方もいるかと思います。
そんな方に向けて、一応半世紀競馬を見てきたものとして、競馬への視点を拡げるような記事を書いてみました。
ただ、長く競馬を見ていて、知識が豊富だからと言って、予想がより当たるとは限りませんが、競馬がより楽しくなってもらえればと思います。
現代の競馬とはサラブレッドの競争です
かつては、競争には2系統があり、サラ系とアラ系がありました。サラとはサラブレッドのことアラとはアラブ系のことです。
アラ系の詳細は省きますが、サラブレッドに比べて小柄で、時々怪物が産まれますが、それでもサラブレッドにはかなわないこともあり、大半の競争が廃止され、2007年をもって地方競馬からも姿を消しています。
サラブレッドとはサイアーライン(父方の血脈)を遡ると必ず始祖の3頭であるダーレーアラビアン、バイアリーターク、ゴドルフィンアラビアンに行きつくものです。
一方で、母方に当たる牝系は、アラブ種の血量が25%未満であればサラ系となります。
25%は母方の祖父母のどちらかがアラブ系でしたら25%となりますので、それ以下の血量であるべきなので、曾祖父母以降になります。
ただ、現在ではアラ系の血は相当薄まっていて、アラブ系の血量を考慮する心配はありません。
さて、サラブレッドは1791年以降、厳格な血統登録がなされています。また、人工授精は認められず、直接交配(その行為が人により見届けられる)のみによってサラブレッドとして認められます。
余談ですが、日本でも父親がわからない私生児(「やってしまったモリケイの話」参照)が産まれたことがありました。現代のDNA解析技術をもってすれば、父親を判明することはできると思いますが、産まれた仔はサラブレッドとして認められず、競争することはかないませんでした。
上記の、厳しい管理下の元、世界中でサラブレッドによるHorse Racing=競馬が行われているわけです。
G1競争、特にクラシックは残す血の選択です
牝系は輸入した繁殖牝馬、国内でレースを使った馬で、その産駒がある程度走れば、仮に未出走でも、その血脈は脈々と受け継がれていきます。
ただ、牡系は、重賞特にG1を勝つことが血を繋げる条件になります。日本ではクラシックよりもJCやグランプリレースが伝統的に評価が高いように思えますが、特にクラシック(日本なら皐月賞、ダービー、菊花賞)が重要視されるのが世界では一般的です。
いずれにしても、G1を勝って種牡馬になることが血の選択になり、馬に自覚はないと思いますが、生存競争でもあったのです。
まれに、兄弟に超一流馬が産まれると、競争成績に関わらず種牡馬になる場合もあります(例えばディープインパクトの全弟ブラックタイドやオンファイア)が、基本的に国産馬はG1勝利が基本となっています。
従いまして、血統的な視点からいえば、G1レースは、どの血脈(サイアーライン)を残していくかの選択肢をホースマンに与える要素になるというわけです。
G1レースを予想する際、「残す血」を選んで予想するのもG1ならではのもの、そういう視点でG1レースを見てみると、また違った見え方になるのではないかと思います。
逆に思い入れが強く、私の場合ほとんどG1の予想は当たりませんけど…。
ダービー馬はダービー馬から
馬主、生産者、調教師、騎手など、すべてのホースマンの夢はダービーに勝つことです。
そして、そのダービー馬から次世代のダービーを産み出すことが、さらなる夢として広がっていくのですが、これは日本だけでなく、世界のホースマンが夢見る、壮大な血のドラマでもあります。
ただ、日本では種牡馬も繁殖牝馬も輸入に頼っていた時期が長く、なかなか届かない夢でした。
例えば3冠馬シンザンの代表産駒ミホシンザンは皐月賞を勝ちましたが、故障してダービーは不出走に終わり、その後、菊花賞を勝っています。
むしろダービーを勝てなかった馬たちが種牡馬になってダービー馬を輩出する例はありました。
古くは、社会現象にもなったハイセイコーですが、ダービーは超ハイペースに巻き込まれて3着でしたが、産駒のカツラノハイセイコがダービーを制しています。
そして、皐月賞を圧勝しましたがダービーは2着だった、天馬トウショウボーイが3冠馬ミスターシービーを輩出しました。
それでは、最初に日本ダービー馬からのダービー馬はと言うと、私の知る限り、無敗の3冠馬シンボリルドルフ(1984年勝馬)からでたトウカイテイオー(1991年勝馬)が初めてだったと思います。
しかし、現在では、ハイセイコー→カツラノハイセイコ、トウショウボーイ→ミスターシービー、シンボリルドルフ→トウカイテイオー、いずれのサイアーラインも消滅していると言って差し支えない状況です。
それだけ、この父方の血の継承であるサイアーラインの維持は、とてもその継続が難しいのです。
しかし、その後、1頭の種牡馬と1頭の持込馬によって、日本の競馬が大きく変わり、この難しい血の継承を数世代引き継いでくるれ可能性が産まれました。
日本の競馬を変えたサンデーサイレンスとキングカメハメハ
現在では、国際レース体系も整備され、多くの国に分かれ、また、血脈も分かれていますが、近年ではダーレーアラビアン系、特にネアルコ系とネイティブダンサー系が席巻していると言えます。
日本では以下の2系統が主流になっていますね。
ネアルコ→ロイヤルチャージャー→ヘイルトゥリーズン→ヘイロー→サンデーサイレンス
ネイティブダンサー→レイズアネイティヴ→ミスタープロスペクター→キングマンボ→キングカメハメハ
サンデーサイレンスはアメリカの2冠馬で3冠目のプリークネスSでも2着でした。
このような実績を持った種牡馬が日本に入ってくることは珍しいことなのですが、サンデーサイレンスが来てくれたことで、日本の競馬が大きく変わったことはご存じの通りです。(「サンデーサイレンスはなぜ日本にこられたのか」を参照願います)
日本ダービーでいえば、1995年タヤスツヨシに始まり、98年スペシャルウイーク、99年アドマイヤベガ、2000年アグネスフライト、03年ネオユニヴァース、そして05年無敗の3冠馬ディープインパクトを輩出してきました。
そして、ダービー馬からダービー馬という観点からすると、まずはネオユニヴァースから09年のロジユニヴァースが達成しましたが、この系統は残念ながら勢力の拡大とはなりそうにありません。
しかし、勢力の拡大を担う後継者が晩年に産まれました。無敗の3冠馬ディープインパクトです。
その、ディープインパクトから、12年ディープブリランテ、13年キズナ、16年マカヒキ、18年ワグネリアン、19年ロジャーバローズ、そして、20年無敗の3冠馬コントレイルと、父と同じ6頭のダービー馬が出ています。
そしてダービーを勝てなかった馬を含めて、今後この勢力が拡大されそうな勢いです。
この勢いは国内だけでなく、ディープの仔は、近年かなり輸出されてきました。今後、活躍して将来的にディープの後継馬を逆輸入なんてことが起きるかも知れません。
もう一頭、サンデーサイレンスほどではありませんが、持込馬(受胎した状態で輸入された繁殖牝馬の仔)としてキングカメハメハが04年ダービーを制覇すると、種牡馬としても15年ドゥラメンテと17年レイデオロを輩出しています。
何と、この6年は、ディープインパクトとキングカメハメハの2頭でダービー馬を独占して輩出しています。ただ、残念なことに両頭とも相次いで他界してしまいました。
今後、サンデーサイレンスの他の種牡馬であるハーツクライや3冠馬オルフェーブルを含めて、どこまで勢力を拡大できるか注目し続けたいと思います。
牝馬の活躍と牝系の繁栄?!
牝系ですが、近年、日本の競馬は牝馬の活躍が華々しく、特に20年は天皇賞春以外のG1を牝馬が制しています。
2020年 (芝牡牝混合G1の牝馬成績)
レース | 1着 | 2着 | 3着 |
高松宮記念 | モズスーパーフレア | グランアレグリア | |
大阪杯 | ラッキーライラック | クロノジェネシス | |
天皇賞春 | |||
安田記念 | グランアレグリア | アーモンドアイ | |
宝塚記念 | クロノジェネシス | ||
スプリンターズS | グランアレグリア | アウィルアウェイ | |
天皇賞秋 | アーモンドアイ | クロノジェネシス | |
ジャパンカップ | アーモンドアイ | デアリングタクト | |
マイルチャンピオンシップ | グランアレグリア | ||
有馬記念 | クロノジェネシス | サラキア | |
10レース | 9勝 | 4回 | 3回 |
以上、牡馬のレベルが心配になるくらいです。
もちろん片翼を担う牝馬の活躍は、競馬界にとってプラスではありますが、一つの現実として、近年牡馬を圧倒していた牝馬の産駒の成績が、芳しくないのです。
牝馬5冠馬アパパネ、ダービーを含む6冠馬ウオッカ、4冠馬ダイワスカーレット、5冠馬ブエナビスタらは、牡馬勝りの名牝ですが、産駒の重賞実績は、先だってアパパネ産駒のアカイトリノムスメがG3クイーンカップ勝ったくらいです。
むしろ、同じ時代に影に隠れて目立たなかった、エリザベス女王杯勝馬フサイチパンドラからアーモンドアイが出たように、なかなか父母併せてx冠の産駒は、大方期待外れに終わることの方が多い現実は理解しておきたいところです。
とは言え、古くはオークス馬ダイナカール(父ノーザンテースト)や桜花賞・オークス馬ベガ(父トニービン)、近年では日米オークス馬シーザリオ(父スペシャルウイーク)など強い牝馬が名馬を作り上げてきたことも事実なのです。
2020年G1を賑わせた牝馬たちから、それぞれの特性を活かした産駒が出ることを期待しましょう。
終わりに
いかがでしょうか、競馬の楽しみ方の要素として、ここで紹介した「血統」の他に、「データ」、「指数」、「調教」、「馬体」、「走法」、「厩舎・調教師」、「ジョッキー」、「ラップ」や「馬場・コース」など、楽しむ上の多くの要素があります。
ただ、主役のサラブレッドが血脈によって規定され、その血脈によって産駒に特徴があったりします。血統がすべてではありませんが、血統を抜きにして競馬は語れないと思うのです。
次回はアメリカの競馬と日本の競馬について違いを見たいと思います。
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