Mr.Prospector系 日本では成功しにくかった?!

Mr. Prospector

アメリカのコースは基本ダートです。ただ、日本のような深いダートではなく、砂質が違い比較的時計が出るダートコースです。また、芝コースはダートコースの内側にあり、あくまでもメインは三冠レースを含めてダートコースで行われます。

また、意外に思えますが、アメリカの競馬場は案外小回りコースが多いのです。ケンタッキーダービーが行なわれるチャーチルダウンズ競馬場の全周は1マイルで1609mしかありません。プリークネスSのピムリコ競馬場も同じです。(ベルモントSのベルモントパーク競馬場のみが1周2400mでアメリカでは最大級の競馬場になります)

そうなると、頭数の多いクラシックレースでは、良い位置を取ろうと1コーナーに殺到することから、ハイペースになることが多くなります。しかも、日本と比べて時計が早いと言ってもダートコースですから、鮮やかな追い込みや直線だけの差し切りはほとんどなく、先行勢の我慢比べか、中団以降から直線に入るまでに先行勢を射程圏におく、いわゆるマクりが必要になります。

このようなレースが得意な馬で、逆に遅めのペースで抜群の手応えで先頭集団で最終コーナーを回ってジョッキーが追い出してもさっぱり伸びない。このように追っても味のないことを最近はあまり聞かなくなりましたが「一本調子」と言っていました。そしてこの傾向はNative Dancerの産駒に多い傾向がありました。

その「一本調子」の傾向を継いだRaise a Nativeを経て、快速馬Nashuaの仔の間に生まれたのがMr. Prospectorでした。

Mr. Prospectorは大種牡馬になりますが、その競争成績は大したものではありません。14戦7勝で2回短距離でレコードタイムを出していますが、重賞を勝っていません。それが種牡馬となり、コンスタントに活躍馬を出し、1987・88年とリーディングサイヤーになります。Mr. Prospector系の勝ち数が5割を超える年もあったそうです。

以下、種牡馬になった主な産駒たちです。

  • 1975 Fappiano
  • 1978 Miswaki
  • 1979 Crafty Prospector→アグネスデジタル
  • 1980 Eillo
  • 1983 Woodman
  • 1984 Afleet、Gulch、Gone West、Mining
  • 1985 Seeking the Gold、Forty Niner
  • 1987 Jade Robbery、Machiavellian
  • 1988 Scan
  • 1990 Kingmambo
  • 1991 Our Emblem
  • 1992 Smart Strike
  • 1997 Fusaichi Pegasus

多くの種牡馬や産駒が日本にも来ましたが、Miswaki系、Kingmambo系以外はBMSとしての活躍以外は目立った成果が上げられませんでした。

日本の競馬は高速の芝コースが主流でありながら、近年スロー競馬が多く、脚をためて直線で爆発させる能力が求まられます。求められる能力が違うのです。

Mr.Prospector系が日本で好走する条件は、ダートコース、短距離、ワンターンのコース(阪神、京都1800m、新潟2000m、形状上東京の2000mがギリギリか)で、ある程度流れればという条件でプラスになる場合がありますが、コーナーを4回回るようなコースではハイペースにならない限り割り引かざるを得ません。

私にとって割引要素となり、好きな血統ではありませんが、以上のような傾向があるからです。

ただ、BMSとしての活躍は世界の競馬にかなり貢献しています。特にMiswakiは欧州(英・愛)で13年リーディングサイヤーになったSadler’s WellsとMiswaki産駒の凱旋門賞馬Urban Seaの間に生まれた仔から、去年まで10年間連続で欧州(英・愛)のリーディングサイヤーとなっているGalileoがでています。日本では何といってもサイレンススズカのBMSがMiswakiです。サイレンススズカはMr.Prospector系の理想形を日本で具現化した名馬でした。血がつながらなかったことが残念です。

Kingmambo系以外でG1を勝ったのはマーベラスクラウン(Miswaki)がジャパンカップ、シーキングザパール(Seeking the Gold)がNHKマイルC、マイネルラヴ(Seeking the Gold)がスプリンターズSで勝っています。

やはり偉大な種牡馬というのは繁殖牝馬の良いところも活かして様々なタイプの産駒・種牡馬が産まれることにあります。基本的には一本調子のスピード持続系でしたが他国の競馬にも適応できる馬も産まれました。こういったところが血統の面白さです。

また、今後この系統の血が薄れていくことで、その特徴とも言える「一本調子」の性質が弱まっていくことでしょう。そして、それはもう始まっているのではないかと思います。

さて、次回は4頭のダービー馬を輩出し、唯一日本でも成功したと言えるMr.Prospector系のKingmambo(キングマンボ)系について書いてみたいと思います。

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