サンデーサイレンスもノーザンテーストもミスプロ系種牡馬も北米から来ました
日本の2012年から2020年までリーディングサイアー(1年間の産駒の獲得賞金1位の種牡馬)はディープインパクトでした。
その前、1995年から2007年まではディープインパクトの父サンデーサイレンスがリーディングサイアーでした。
更にその前、1982年から1992年の11年間でノーザンテーストが10回リーディングサイアーになっています。
ディープインパクトはサンデーサイレンスの産駒ですが、ノーザンテーストもサンデーサイレンスも北米から輸入されています。
ノーザンテーストはカナダ産まれで、アメリカでセリに出され、ヨーロッパでマイル以下のG2を2勝し、英2000ギニーで4着、エプソムダービーで5着などして、日本に輸入され種牡馬になっています。(ノーザンテーストについては「日本で根を生やしたノーザンダンサー系種牡馬ノーザンテースト」)
成績がイマイチかと思うかもしれませんが、当時、世界はノーザンダンサー系の全盛期で、なかなかG1ホースには手が出ない時代です。日本は高い種牡馬を購入しても、世界的な産駒を出せず「一流馬の墓場」と言われていた時代もあったのですよ。
その後の日本での成功を考えれば、ノーザンテーストの輸入は大成功だったと言えるでしょう。
しかし、ノーザンテーストと比べ、サンデーサイレンスは2冠馬と競争成績は段違いでした(3冠目は2着)。アメリカの2冠馬をアメリカのホースマンが手放すわけないのですが、日本に輸入されました。(Sunday Silence 1:サンデーサイレンスはなぜ日本にこられたのかを参照してください)
一方、キングカメハメハの母はアイルランド産ですが、アメリカで繁殖牝馬になり、キングマンボを受胎したまま、日本に輸入された「持込馬」です。キングカメハメハも2年間リーディングサイヤーになっていますね。
以上。これまで歴史を作ってきた、種牡馬の輸入元になっているアメリカの競馬がどういうものか、知っておくことは、日本の競馬を俯瞰するうえで、欠かせないと思うのです。
アメリカのレースはダートが基本
さて、日本の中央競馬では芝のレースが基本で、コースの外周が芝コースになっていて、ダートコースは内周になっています。
アメリカは外周がダートコースで、内周に芝のコースが基本となっています。
また、アメリカだからと言って馬場が大回りと言うわけではありません。
例えば、クラシック第1弾ケンタッキーダービーが実施されるチャーチルダウン競馬場でも外周ダート2000mは4コーナーから直線の入り口から1周します。純粋に1周1600mほどです。
3冠2戦目のピムリコや西海岸のブリダーズカップが行われたこともあるサンタアニタなども、同様のサイズで小回りです。
ただ、日本の府中のような大箱コースがないわけではなく、3冠目ベルモントステークスのベルモントパークは外周2400mで、ほぼ府中と同じ規模となっています。
もちろん、クラシックレースはすべてダートです。
「ダート」は日本のダートコースが公園にある砂場のような砂質ですが、アメリカの場合はもっと土に近いと言われています。また、アメリカのダートはやや浅いようで、時計はアメリカの方が速いとも言われています。
ただ、馬の後ろにいると土の塊を受けることになるので、結構ペースが流れ、スピードと底力の争いになり、結構先行馬有利の単調なレースになりやすく、直線一気なんてことはほとんど起きません。一本調子なレースになることが多いのです。
直近の3冠馬ジャスティファイ(Justify)も3レースとも番手からの抜け出しか、ほぼ逃げ切りでした。歴代3冠馬もそうです。
ちなみに、ケンタッキーダービーのレコードは正確な距離2012mで1:59.4です。1973年3冠馬セクレタリアート(Secretariat)がマークしています。
また、芝のレースは基本的にレース名の後に“Turf”を付けることで区別することが一般的です。
アメリカのクラシック(3冠レース)とブリダーズカップ
日本の競馬は5月の最終週の日曜日(暦次第で6月にずれ込むこともありますが)をダービー(東京優駿)としていて、そこから日程が決められていきます。
アメリカの場合は5月第1週の土曜日にケンタッキーダービー、2週後にプリークネスステークス、その3週後にベルモントステークスが行われます。
日本でいえば、皐月賞からダービーより1週間短い期間で3冠すべてが実施されることになります。
距離は10F(2012m)- 9.5F(1911m)- 12F(2414m)と短めです。
そして、クラシックを勝った馬は、この過酷な3冠レースを終えて、更に活力があれば、10月下旬にあるブリダーズカップを目指すことになります。
ブリダーズカップはアメリカ競馬の祭典で土曜日は2歳戦5戦(うち1戦のみG2)、日曜日は距離、芝・ダート別、牝馬限定を含めて9戦(すべてG1)が行われる1大イベントになっています。
日本は馬券を売るために、小刻みにG1を小出しにしますが、ブリダーズカップは1週末で各カテゴリーのチャンピオンを決めてしまおうと言うお祭りです。
さて、レースの中でもクラシックホースが目指すのは、最終レース、ブリダーズカップ・クラシックで、ケンタッキーダービーと同じダート10Fのレースです。
ここを使って、古馬になっても走る場合もありますが、大抵はここで引退となります。というか、激戦の影響か故障発症や体調不良などで、治癒に長い時間が見込まれる場合は、そのまま引退と言うケースが多いのです。
2015年3冠馬アメリカンファラオはこのパターンで3冠後2戦挟んで?!ブリダーズカップ・クラシックを勝って引退しました。因みにこの3冠+ブリダーズカップ・クラシックをグランドスラムと言うようです。
2018年ジャスティファイは3冠後、ブリダーズカップ・クラシックを目指しましたが怪我で引退しています。やはり過酷なんですね。
われらがサンデーサイレンスは、3冠目のベルモントステークスで2着したあと、ブリダーズカップ・クラシックに勝利しましたが 、その後も競争を継続し、古馬になって2戦して引退しています。
アメリカ3冠馬について
3冠馬について少々。
1973年のセクレタリアト(父Bold Ruler)が私が知る最初のアメリカクラシック3冠馬です。
それもそのはず、25年・四半世紀ぶりの3冠馬でベルモントステークスの後続が映らなくなるくらいの圧勝を覚えています。
1977年のシアトルスルー(父Bold Reasoning、Bold Ruler系)も強かったのですが、中3年でした。
1978年はアファームド(父Exclusive Native、Raise a Native系)は2年連続の3冠馬で今後も数年後には3冠馬が産まれると皆思っていたと思います。次の3冠馬が出るまで37年かかるとは誰が予想したでしょう。
2015年に37年ぶり3冠馬アメリカンファラオ(父Pioneer of the Nile、Fappiano-Unbridled-Empire Maker)が出ました。
そして2018年ジャスティファイ(父Scat Daddy、Storm Cat-Johannesburg系)が無敗で3冠を達成しました。
アメリカが目指す血統とは
以上のことから、アメリカ競馬が目指す理想的な血統は以下の3点です。
・2000mを持たせるスピードとダートコースをこなすパワーを併せ持っている
・成長のピークが3歳春に来る(古馬になっての成長力は求められていない)
・タフ
ただ、スピードを求めれば、スタミナが削がれるし、たとえ2000mに強くても、古馬になってピークを迎えたり、逆に早熟では、クラシックレースには意味が薄い。
ただ、血統の配合とは、それらの特徴を把握して、相性を加味しながら配合をしていくものです。
アメリカのリーディングサイヤーは日本のように寡占状態ではなく、多くても種牡馬が2、3回しか、リーディングサイヤーになれません。個人的な考えですが、この状況はとても健全な状況であって、血が濃すぎなくなるのを防ぐと同時に、多くの選択肢を持てるのです。
余談ですが、日本はサンデーサイレンスの25%や18.75%が多くなってきました。このいわゆるインブリードが続くと短期的には爆発的な名馬が出る確率がありますが、健康面や気性面で問題が出て、確率が悪くなるのです。
とはいっても、3つの系統が本流かなと思われる血統です。
- Native Dancer – Raise a Native – Mr. Prospector –
- Northern Dancer – Storm Bird – Storm Cat –
- Northern Dancer – Sadler’s Wells – El Prado –
2010年以降、アメリカのリーディングサイアーはGiant’s Causeway2回、Distorted Humor、Kitten’s Joy2回、Tapit3回、Umbridled’s Song、Into Mischief2回の6頭ですが、すべて上記3系統の血脈となっています。
ちなみに、サンデーサイレンスの父ヘイローは1983年と1989年にリーディングサイアーになっていますが、1989年はサンデーサイレンスの貢献大によるものです。その後Saint Balladoが2005年リーディングサイアーにはなりますが、主流にはなりえていません。
日本では1995年以降サンデーサイレンスとその産駒が2010・11年のキングカメハメハを除きリーディングサイアーになっています。やはりこの状況は健全とは言えないと思うのです。
また、アメリカの競馬は先に述べたように一本調子のレースが多いため、特にRaise a Native – Mr. Prospector系が多く入ってきていますが、スローペースが多く、追ってからの味が求められる日本の競馬では唯一の例外Kingmambo系しか、活躍できていません。
そうなんです、日本の競馬を支えてきたアメリカの種牡馬ですが、日本で結果を出しているのは、1.2.3.以外の、どちらかと言うと非主流の血統と言えます。
今後、どのようなアメリカの系統が日本の競馬に合うのか、試行錯誤が続けられていくのです。
個人的にはブリックスアンドモルタル(Storm Birdの濃いインブリード)に注目していますが、主流血統ではありませんが、日本の牝系を持つモーリスにも期待しています。
日本でも、もう少しいろんな血統が走ってくれて、健全な状態になって欲しいと思います。
以上です。
次回は外厩制度とローテーションについてです
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